| Copyrights 2003 Masayuki Sasaki. All rights reserved. Last updated on 2003/11/1 |
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| 人間活動の「創造性」に関心を持った研究者の系譜を辿ると、文化経済学の創始者と目されるジョン・ラスキンやウィリアム・モリスに遡ることができる。イギリスのヴィクトリア期に活躍したラスキンは、当時の主流であった功利主義的経済学に対抗し、「人間の創造活動と享受能力」を重視する芸術経済学を提唱した。彼によれば芸術作品に限らず、およそ財の価値は本来、機能性と芸術性を兼ね備え、消費者の生命を維持するとともに人間性を高める力を持っている。このような本来の価値(固有価値)を産み出すものは人間の自由な創造的活動、つまり仕事work(ラテン語でオペラ)であり、決して他人から強制された労働labor(ラテン語でラボール)ではない。本来の固有価値は、これを評価することのできる消費者の享受能力に出会ったときにはじめて有効価値となると主張した。 彼はイタリアの都市ヴェネチアの建築群の美しさに心を奪われ、名著『ヴェニスの石』を著し、終生その保存に尽力した。そこで世界的な文化財である多数の建築の中から特にゴシック様式を至高のものとしているが、その理由は、職人達の自由な仕事(オペラ)が生み出した「精神の力と表現」がそこに込められているからであった。 ラスキンの後継者を自認するモリスは、機械制大工業による大量生産=大量消費が労働疎外と生活の非人間化を促進すると批判し、ラスキンの提唱した職人の創造活動に基づく工芸(クラフト)的生産の再生により、「労働の人間化」と「生活の芸術化」をはかる美術工芸運動を指導し、その影響は食器、家具、インテリア、住宅等のデザインを通じて世界中に広がった。 ラスキンとモリスの思想を都市論に適用したのが都市研究者として著名なルイス・マンフォードである。彼は古典的名著である『都市の文化』において「文化的貯蔵、伝播と交流、創造的付加の機能――これこそ都市のもっとも本質的な機能であろう」とし、要約的に都市を「文化的個体化の単位としての地域」と定義し、メガロポリスを支配する金融機関、官僚機構、そしてマスメディアの三位一体構造を痛烈に批判して「生命と環境」を何よりも重視する「生命経済学」を提唱し、「人間の消費活動と創造活動を充実させる都市の再建」を主張した。 『都市の文化』の中で彼は都市の発展を「原ポリス」→「ポリス」→「メトロポリス」→「メガロポリス」→「ティラノポリス(専制都市)」として、その最後の段階に「ネクロポリス(死者の都市)」を置いて、その廃墟の上に再び「ポリス」が復活するという都市の輪廻説を展開し、巨大都市の存在への懐疑的予言を展開した。瀕死の状態にある巨大都市を再生させるための彼の提言は市民の「生活の文化」を豊かにすることであった。 さて、現代の「創造都市」論の系譜についてみると、代表的な二つのアプローチがある。 これに対して、第2のアプローチとしては欧州創造都市研究グループが挙げられる。このグループに属するランドリーとビアンキーニが1995年にまとめた『創造都市』という小冊子に続き、2000年にはランドリーによる『創造都市――都市イノベータ―のための道具箱』と題する著書が出版されている。後者は都市問題に対する創造的解決のための「創造的風土」creative
milieuをいかにして作り上げ、いかにそれを運営していくのか、そしてそのプロセスをいかにして持続的にしていくのか、実践的に「創造都市をつくるための道具箱」を提供する興味深い「創造都市政策論」でもある。 以上を踏まえると「創造都市とは市民の創造活動の自由な発揮に基づいて、文化と産業における創造性に富み、同時に、脱大量生産の革新的で柔軟な都市経済システムを備え、グローバルな環境問題や、あるいはローカルな地域社会の課題に対して、創造的問題解決を行えるような『創造の場』に富んだ都市である」と言えよう。 佐々木雅幸 |
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